タイムラプスインキュベーターとは、カメラを搭載した培養器で、胚発生の様子が動画として記録されるため、経時的な胚観察が可能です。
これによるメリットが2点あります。
1点目は、培養環境を一定に保つことができることです。
卵管内は低酸素状態であるといわれており、当院でも全てのインキュベーターの酸素濃度は5%に設定しています。
しかし、大気中の酸素濃度は20%ほどあり、観察のために大気中に胚を出すことで培養液中の酸素濃度などの環境が変化してしまいます。この変化が胚へのストレスとなり、胚発生に悪影響を及ぼすとされています。
タイムラプスインキュベーターはインキュベーターの外に出すことなく胚観察ができるため、安定した培養環境を実現します。
2点目は前核の見逃しを防ぐことができることです。
通常のインキュベーターはインキュベーターから出して顕微鏡で観察を行うため、観察した時点での前核の有無しか確認できません。観察時よりも早く前核が消失してしまった場合は前核を確認できず、正常受精ではないと判断されます。
しかしタイムラプスインキュベーターは動画で確認できるため、早期に前核が消失した場合でも前核の確認が行えます。
上の2点により、培養可能な受精卵の増加、胚盤胞率の向上などが期待されます。
タイムラプスインキュベーターを使用した胚培養は先進医療として認められているため、保険診療での採卵でも利用できます。