こんにちは、胚培養士です。
今回は培養室の培養設備についてご紹介します。
培養室は患者様からお預かりした検体を扱う場所です。
当院ではセキュリティや清潔度の観点から、医師や胚培養士といった限られたスタッフのみが入室できるようになっています。

胚培養士の業務は採卵で得られた卵子と提出された精子で受精操作を行う体外受精・顕微授精や、それによってできた受精卵の培養および観察、胚盤胞へ成長した胚の凍結・融解・移植など多岐にわたります。
それらの作業内容に合わせてさまざまな機器を設置しています。
培養室にはクリーンベンチと呼ばれる作業台が8台あります。
クリーンベンチは空気の流れを一定方向にすることで、その場所の清浄度を保っています。
・精子操作用のクリーンベンチ

こちらは主に精子処理を行うクリーンベンチです。患者さま1人につき1台のクリーンベンチを使用しています。
・卵子・胚操作用のクリーンベンチ

◀ 顕微鏡、PGT-Aを行う顕微鏡
顕微鏡が埋め込まれているため段差がなく、安全に卵子や胚が入ったディッシュを扱えるようになっています。
また2台には顕微鏡のなかでも顕微授精やPGT-Aなどのための胚生検を行うことができる顕微鏡が設置されています。左右のアームを操作することでより精密な操作が可能になっています。
・パスボックス

オペ室と培養室が繋がる窓で、パスボックスと呼んでいます。採卵のときはこの窓を介して、患者さまから採取した卵胞液(卵子が含まれる液体)の受け渡しが行われます。
・インキュベーター(培養庫)


▲ タイムラプスインキュベーター
受精前の卵子や受精卵を培養する機械です。庫内は卵管内と同じように低酸素の環境になっています。
特にカメラが内蔵されているタイムラプスインキュベーターは、受精卵を外に出すことなく観察を行うことができるため、胚にストレスを与えることなく培養を行うことができます。
・凍結タンク


凍結した胚を保管するタンクで、中は-197℃の液体窒素で満たされています。タンク内の液体窒素は毎朝計測し補充しています。
このように培養室の中にはさまざまな機器が置かれていますが、胚培養士が日々点検を実施し、安定した培養環境を提供できるようにしています。
