妊活を成功させるためには卵巣に残っている卵子の数を知り、妊娠・出産のチャンスがどれくらい残されているのかを見極めた上で治療を行うことが大切です。
◎卵巣内で発育中の卵子の数を調べる検査です
卵子の数を推測する方法にはAMH検査があります。
AMH検査とは、卵巣内に残っている発育中の卵子の数(卵巣予備能)を推測する検査です。
AMH(アンチミューラリアンホルモン)とは、発育している卵子から分泌されるホルモンです。発育中の卵子の数が多ければアンチミューラリアンホルモンが増えてAMH値が高くなり、発育中の卵子の数が少なければホルモンが減ってAMH値が低くなります。
AMH検査では採血によって血液内のAMH濃度を確認し、卵巣内で発育中の卵子の数を推測します。月経があればどのタイミングでもAMH検査が可能です。(当院では当日測定が可能です)
[AMH検査の目的]
・生殖補助治療に利用できる卵子がどれくらい残っているか
・どのような卵巣刺激法が適切か
上記を推測・判断するためにAMH検査を行います。
◎検査により、生殖補助治療に利用できる卵子の数を推測します
卵巣の中に発育中の卵子がどれだけ残っているかを調べるためにAMH検査を行います。
AMH検査を行い、卵巣内で発育中の卵子の数を調べることで生殖補助治療に利用できる卵子がどれだけ残っているかを推測できます。
◎卵巣刺激の方法を決める判断材料にもなります
卵巣内で発育中の卵子の数を調べるのがAMH検査の第一の目的です。
卵子の数を調べることに加え、AMH検査の結果は卵子を採取する際に行う卵巣刺激の方法を決める判断材料にもなります。
卵子を採取する際には、卵巣内に発育中の卵子がどれくらいあるのかをAMH値で確認しながら卵巣刺激法を決定します。
AMH値が高く卵巣の機能が良好であれば自然周期法から高刺激法まで、幅広い選択肢から卵巣刺激法を選べます。
AMH値が低い場合には卵巣の機能が低下している可能性があります。機能が低下している卵巣を刺激し過ぎると卵子を採取できなかったり卵巣の異常(OHSS(※)など)をひきおこすおそれがあるため、AMH値が低いケースでは原則として自然周期法または低刺激法しか行えません。
(※)OHSS(卵巣過剰刺激症候群)・・・排卵誘発剤に過剰に反応して
卵巣がふくれあがり、お腹や胸に水が溜まる症状。
AMH値の低さはかならずしも妊娠率とは関係しません。AMH値がほぼゼロに近いケースでも卵子が受精さえすれば、妊娠・出産する方もいます。
◎AMH値が低い方
AMH値は妊娠率を決める数値ではありません。ただし、AMH値が低い方は卵巣機能が低下し、閉経が近づいている可能性があります。
通常、閉経は50歳前後で迎えますが、20代女性の約0.1%、30代女性の約1%に早発閉経が見られます。
AMH値が低い方は卵子の数が少なくなっており、自然排卵が起きにくくなっている状態です(=残された妊娠可能な期間が短くなってきている)。卵子が少なくなっているため、治療を行うときにはAMH値を見ながら慎重に卵巣刺激法を選ぶ必要があります。
<AMH値が低くなる原因>
・加齢
・喫煙
・子宮内膜症(チョコレート嚢腫など)
・卵巣の手術(卵巣嚢腫や子宮内膜症など)で卵管や卵巣を摘出した場合
なお、低用量ピルを服用している方は実際の数値よりAMH値が低くなる場合があります。正常なAMH値を知るためには、ピルを1ヶ月以上休薬した後のAMH検査をおすすめします。
◎AMH値が高い方
AMH値が高い方は卵巣内で発育中の卵子の数が多いため安定して卵子を採取しやすく、卵巣刺激法の選択肢も増えます。
ただし、AMH値は高ければ高いほど良いものではありません。AMH値が高すぎる場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性があるため、注意が必要です。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、卵胞(卵子と卵子を取り囲む体細胞)の成長が途中で止まり、卵巣内にたくさんの小さな卵胞がとどまってしまう病気です。多嚢胞性卵巣症候群になると排卵がとどこおり、卵胞が発育しにくくなります。多嚢胞性卵巣症候群についてご不安がある方は当院にてご相談ください。
AMH値は卵巣内で発育中の卵子の数を調べるための数値です。卵子の質の良し悪しや妊娠率を判断するものではありません。
AMH値が低くても妊娠できる可能性はあります。数値が低い場合でもあまりご心配なさらず、ご自身の状態を把握してそれぞれの方に合った治療を進めていくことが大切です。
なごやARTクリニック
院長
服部 幸雄
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