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胚盤胞移植について



胚盤胞(はいばんほう)とは、着床(ちゃくしょう:受精卵が子宮内膜に潜り込むこと)できる状態に変化した受精卵です。胚盤胞に変化した受精卵が子宮内膜に着床することで妊娠となります。


生殖補助治療では着床率を上げるため、受精卵が胚盤胞になるまで体外で培養を行い、培養した胚盤胞を子宮内に移植する「胚盤胞移植」を行うことがあります。


胚盤胞移植とは
◎受精卵を培養し、胚盤胞に変化させて子宮内に移植する方法です

胚盤胞移植とは、体外受精や顕微授精した受精卵を5~7日間培養し、受精卵を胚盤胞の状態に変化させて子宮内に移植する方法です。


生殖補助治療においては、妊娠に必要な着床の確率(着床率)を上げるために胚盤胞移植を行います。


◎胚盤胞移植のメリット

1.胚盤胞まで成長した受精卵(胚)を子宮内に移植できる

2.排卵後5日目以降(最大で7日間)に移植するため子宮の収縮を抑えられ、着床率が上がる

3.胚盤胞まで培養させることで質の良い受精卵を選びやすくなる

4.移植の際に行う頸管粘液の除去により、妊娠率向上を期待できる

5.移植から着床までの期間が短いため(胚移植から1~2日後)、受精卵が卵管内に逆流する確率が低くなり、子宮外妊娠の発生を抑えやすくなる

6.初期胚移植と比べ、もともと生理的に子宮内にある胚盤胞を移植することでより自然な妊娠に近づけられる


〔従来の初期胚移植と胚盤胞移植の違い〕


かつての生殖補助治療では、受精卵を採取して2~3日後の初期胚(4分割期胚~8分割期胚)を子宮内に移植する初期胚移植が主流でした。しかし、自然妊娠では初期胚が子宮内に存在することはなく(自然妊娠では初期胚が卵管内で分割して成長していきます)、不自然な状態とも言えます。


初期胚移植の問題点である不自然な状態を改善し、より自然な状態で受精卵(胚盤胞)を着床に近づけるのが胚盤胞移植の目的です。


これまでは受精卵を胚盤胞まで培養させるのは困難でしたが、ヒアルロン酸培養液などの培養環境の発達により、採取した受精卵を体外で安全に胚盤胞まで育てることが可能になりました。


≪高濃度ヒアルロン酸培養液を用いた胚盤胞移植≫


なごやARTクリニックでは高濃度ヒアルロン酸培養液を用いた胚盤胞移植を行っています。


ヒアルロン酸は体内のあらゆる場所に存在する自然な物質です。高濃度ヒアルロン酸を含む培養液を用いて胚盤胞移植を行うことで以下のメリットを期待できます。


メリット① 着床・妊娠する可能性が高くなる

メリット② ヒアルロン酸が胚と子宮内膜をつなぐ補助的役割を果たし、胚移植後の妊娠率向上が期待できる


◎胚盤胞移植のリスク

着床率・妊娠率の向上を期待できる胚盤胞移植ですが、リスクも存在します。胚盤胞移植の主なリスクは以下の2つです。


1.受精卵が胚盤胞まで育たないことがある


受精卵が胚盤胞まで育つ確率は30~50%です(年齢が若い方が胚盤胞まで育ちやすくなります)。受精卵を複数個採取して培養しても1つも胚盤胞まで育たない場合もあります(育たない場合は胚移植をキャンセルします)。


2.多胎妊娠の確率が高くなる


胚盤胞移植は一卵性双胎(一卵性の双子:ふたご)や多胎妊娠(双子以上の妊娠)の確率が高くなることが研究結果により報告されています。


研究では、胚盤胞移植を行った場合、双胎妊娠(双子)の発生率が1.53%というデータがあります。これは自然妊娠で双子が発生する確率(0.3~0.4%)の約5倍です(※)。


(※)Wenhao Shi, et al. Am J Obstet Gynecol. 2021.DOI: 10.1016/j.ajog.2021.06.101
(胚盤胞の形態および生殖補助医療における一卵性双生児の発生率) より引用。


なごやARTクリニックの胚盤胞移植

なごやARTクリニックでは、以下の流れで胚盤胞移植を進めていきます。


(受精までのステップについてはこちらのページこちらのページをご参照ください)


①「受精卵(胚)の培養(胚盤胞培養)」

温度と気相が一定に保たれた培養器の中で5~7日間(最大7日間)、受精卵を培養します。


②「胚凍結」

成長した受精卵を凍結します。基本的には受精卵を胚盤胞の状態にまで成長させてから凍結しますが、受精卵の成長を考慮し分割期にも凍結を行います。受精卵を凍結保護剤が入った特殊な培養液にひたして脱水・濃縮したあと、マイナス196℃の液体窒素の中に入れて保存します。


③「胚融解」

凍結した受精卵を温めた培養液に入れて急速に融解しながら徐々に凍結保護剤を薄めていき、脱水・濃縮された状態から元に戻します。


④「胚移植(子宮内へ胚盤胞を戻す)」

融解した受精卵(胚盤胞)を子宮内へ戻します。胚移植には、胚盤胞を凍結し、子宮内膜の状態を整えてから融解して子宮内へ戻す凍結融解胚移植のほか、胚盤胞を凍結せずそのまま移植する新鮮胚移植の2通りの移植方法があります。


≪孵化補助術(レーザー)を行っています≫


当院では胚盤胞を子宮内に戻す胚移植の際、レーザーによる孵化補助術を行っています。


胚移植の際にレーザーを用いて透明帯(受精卵の殻)の一部を薄くしたり開口することで、胚盤胞が透明帯の外へ脱出する動き(孵化)を助けます。


胚移植について理解を深め、ご納得できる治療法を選択することをおすすめします

胚移植には初期胚移植や胚盤胞移植など複数の方法があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。胚盤胞移植は妊娠率・着床率の向上が期待できる一方、受精卵が育たず胚移植がキャンセルになる、などのデメリットもあります。


多胎妊娠のリスクを下げるためには胚盤胞移植を単一の胚のみで行うか(※)、または、胚盤胞移植ではなく初期胚移植を行う選択肢もあります。


妊活を成功させ、元気な赤ちゃんを授かるためにも、生殖補助治療をお受けいただく際には患者様ご自身が胚移植について理解を深め、ご納得できる治療法を選択することをおすすめします。


(※)移植する胚盤胞が単一であっても一卵性双胎になることがあります。


なごやARTクリニック
院長
服部 幸雄


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院長
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