こんにちは。培養士です。
当院では、移植する胚に「回復中」という評価がつく場合があります。
その際、患者さまから
「回復中とはどういう状態なの?」
「この卵は移植できるの?」
とご質問いただくことが多いです。
「凍結した時にはちゃんと評価がついているのに…
本当に大丈夫なの?」
そのように不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
「回復中」という状態には、胚の凍結や融解が関わってきます。
移植には、新鮮胚移植と融解胚移植があります。
この移植の違いは、「胚を凍結するかどうか」です。
融解胚移植では、胚を凍結して、子宮内膜を整えてから、
胚を融解して、子宮に戻します。
胚を凍結するときに、胚の中の水分が凍って氷晶(氷の塊)ができてしまうと、
細胞に傷をつけてしまいます。
そのため、胚の中の水分を脱水して、凍結保護剤と入れ替えることで、
細胞を傷つけないようにして凍結します。
この脱水と凍結保護剤の影響で、胚は縮んだ状態になります。
胚を融かすときには、凍結保護剤を取り除いて、水分がゆっくり入れ替わっていきます。
縮んだ状態から、徐々に膨らんで、元の状態に戻っていきます。
当院では、この徐々に膨らんでいく途中の状態を「回復中」と評価しています。
膨らんでいく途中の状態では、
「赤ちゃんになる細胞がどのくらいの大きさなのか?」
「胎盤になる細胞は、どのくらい密なのか?」
など、評価の軸となる部分が見えにくくなってしまうからです。
回復中の胚(左図)と、拡張した胚(右図)
移植するのは、融かしてから4~5時間、評価してから2時間ほど経った頃。
より回復が進んでいたり、まだ縮んでいたりと、胚それぞれのペースで
回復しています。
「回復中」は少し回復がゆっくり。
ですが、回復がゆっくりでも、着床する可能性があるため
移植は予定通りおこなっています。
リラックスして、移植に臨んでいただけたらと思います。